■品種名 カナ(カノ)
■生産地 由利本荘市・にかほ市(焼き畑はにかほ市のみ)
秋田でも、大変手間のかかる焼き畑の火野カブ栽培に取り組んでいる地域があります。にかほ市の農産物直売所「百彩館」の利用者協議会では、途絶える寸前だった焼き畑の火野カブ栽培を復興し伝統の味を再現しています。 当研究会が7月7日に開催した郷土作物勉強会で代表の小松欽一さんにお話をいただいたところ、多くの出席者から現地見学の要望がありましたので、その焼き畑の現場を見せていただくことにしました。
※火野カブ(かなかぶ)とは、秋田県由利地方、山形県庄内地方に伝わる小型のカブのことで、江戸時代から野焼きをして栽培してきたことから「火野カブ」(カナカブ、カノカブ、ヒノナカブ)と呼ばれてきました。焼き畑栽培は山形県の丸い温海かぶが有名ですが、秋田では東成瀬の平良カブなど、細長い白いカブがほとんどです。古くは多くが焼き畑栽培でしたが、現在県内で焼き畑を行っているのは、このにかほ市だけになっています。
もう一カ所、にかほ市桂坂にある畑までご案内いただきました。 ここまでもかなり山間ですが、さらに藪の奥へ。 一同ドキドキしながら藪の中に入って行きます。
奥に行くと少し開けた古い草地のような場所。 一面ワラビが生い茂っていました。これは3年前に作付けしたところ。次の作付けまで後2年待ちます。傾斜の程度も広さも、カナカブ栽培には条件のいい場所とのことで、ここを見つけた時はとてもうれしかったそうです。
ここまでやるかという、百彩館の意欲に一同感動。
ただ伝えたい、残したいためだけではなく、唯一無二の焼き畑火野カブ栽培を楽しんでいるように思えます。
この日は、火入れから種まきまでの一連の作業を見学しました。一年前に作付けしたものの天候のために収穫ができなかった畑で再度種まきをするという場所です。2年続けて火入れをするため、草の量が少なく、他から集めた草も加えての火入れです。
延焼しないように周りから内側に火が回るようにし、周囲に水の準備をするなど細心の注意をしています。(消防署にも届け出をしています。)
ここは高速道路の横。近くには世界に誇るTDKの関連会社が建ち並びます。 ここで営々と焼き畑栽培が行われていたことをどれだけの人が知っているでしょう。
焼いた畑に水播きをして火を納め、すぐにを管理機で土を興します。かつては鍬で耕していましたが、県農業試験場と農機メーカーが共同で専用の小型管理機を開発したことで栽培面積を広げることができました。傾斜地でも上手に興して行きますが、操作には技術が入りますし、やはり危険なので二人で作業をしています。
地ならしの後は種まきです。種が細かいので厚まきにならないようここもコツが必要です。
カナカブの種。ここにかほ市で代々自家採取してきた門外不出の種です。平地で栽培されているカブとは既に性質が違っていると言います。
種を蒔いて約2週間の畑です。8月19日に見学させていただいた百年前の畑です。
こちらは1ヶ月ほど前に種まきをした圃場です。早く播くと草に負けてしまいます。ギリギリでイタドリとの競争しているところです。イタドリを刈ってカブに日が当たるように手を入れています。こちらは、9月下旬には収穫が可能です。ちなみにこの付近はこのイタドリの芽、さしぼが良く取れる地域です。
焼き畑のかなかぶは、真っ白でパリパリした食感が特徴です。由利地域では焼き畑以外にもカナカブ栽培が盛んですが、にかほ地域では、この食感を活かすため、大変手間のかかる焼き畑栽培を行っています。
火野カブは栽培ばかりでなく、漬け込みまでの洗いや調整にも大変手間がかかり、量産はできません。また、「伝統の味は地元に残してこそ」という生産者の方々の想いから、地元を最優先にして販売しており、受注生産はしていないとのことです。