■生産地 由利本荘市・にかほ市
■時 期 9月~12月上旬
秋田県内でも由利地域だけで栽培されているカラトリ芋は、サトイモの親芋のような芋です。サトイモ科ですが、子いも、孫いもを食するのではなく親芋とその芋ガラと言われる葉柄(ずいき)を食べます。青系、赤系と言われる2種類があり肉質は変わりませんが、青系の方が葉柄がしっかりしていて、赤系の方が柔らかいようです。
芋は、皮をむいて煮物や味噌汁に、ずいきは、生のものかまたは一端干したものを戻して酢の物や煮物に利用します。芋についている柔らかい葉柄部分も一緒に煮るのが里芋と違うところでしょうか。
なぜ由利だけにこのカラトリがあるのでしょう。それは、庄内と隣接していて食文化を共有していること、由利地方は県内でも比較的温暖で種芋の保存がしやすかったためと考えられます。そのため由利でも、さらに温暖な、にかほ市や旧本荘市の沿岸地方での栽培が多いようです。
カラトリ芋の煮物です。サトイモと良く似ていますが、サトイモほどのねばりはなく、しっかりした肉質のため、煮崩れはしにくく、甘みがあって、ほっくり感とねっとり感が同居したような独特の食感です。サツマイモとサトイモの中間という感じでしょうか。
カラトリの栽培方法は、普通畑と水苗代などの水田での栽培があります。カラトリは乾燥に弱いので、水田の方が水管理がしやすいためか、よいものができると水苗代での栽培者は言います。(写真は11月の収穫の様子、強風の後で葉はほとんど痛んでいます。)
ここ由利本荘市子吉地区では、多くが家の前の水苗代で栽培してきました。70代の工藤セイ子さんは、嫁に来て50年間ずっと同じ場所で同じ種芋で栽培を続けてきたとのことです。
お盆の棚飾りにも、若いカラトリが供えられます。このことからも、いかに大事にされたきた食材かがわかります。
500本の種芋を植えて、収穫できるのは500本。そこにできる種芋を大事に冬越しをし、そのうちの500本で、また来年同じように栽培します。収穫されたカラトリ芋は、自家用と贈答用。毎年もらえる親類縁者がこの芋を待っているそうです。種芋は、多くできるので、冬越し後に販売しています。冬越し方法方法は、工藤家は、温度が一定の山の洞穴ですが、竹藪に保存する人もいます。凍らせない工夫だったようです。
こちらが種芋となる子芋
地域でも保存することが難しいので、冬越ししてから販売するとのことです。
カラトリは、平成17年に秋田の伝統野菜リストに入ってから、栽培者が増え、加工品も開発されています。
最近は、芋もずいきも由利地方の直売所でも良く見かけるようになりました。本格的には10月下旬ですが、ずいき、芋ともに9月上旬から既に出回っています。